「『夫』の古語って何?」
「『夫』を古語ではどう呼んでいたの?」
「『夫』以外の言葉の古語も知りたい!」
などとお考えではありませんか?
『古語』とは、昔用いられていた単語のこと。
配偶者を指す『夫』という言葉ですが、古語では何と表現していたのでしょうか?
当記事では
- 『夫』の古語は『をひと』
- 古語で夫は何と呼ばれていた?
- 『夫』以外の呼び方の由来も解説!
といった内容を徹底解説していきます。
古語だけではなく『旦那』『主人』などの言葉の使い分けも、あわせて見ていきましょう。
最後までお読みいただければ『夫』の古語や由来がきっと分かるはずです。
『夫』の古語は『をひと』
『夫』の古語は『をひと』という単語。
現代では使われていませんが、過去には配偶者を指す言葉として使用されていました。
『夫』の古語『をひと』について、下記の内容で詳しく解説していきます。
- 『をひと』は『男人』から
- 『夫』以外に『良人』と書くことも
- 上代語では『ひこぢ』とも
それぞれの内容を具体的に見ていきましょう。
『をひと』は『男人』から
『夫』の古語である『をひと』ですが、もともとは「男人」という漢字が充てられていました。
『をひと』の「ひ」が促音化し、発音が次第に『おっと』になったとされています。
私撰注釈書『令集解(りょうのしゅうげ)』には『をひと』という表現が既に見られました。
「夫、俗に呼比止(をひと)と云ふ」
『令集解(りょうのしゅうげ)』は平安時代初期である868年頃に編纂された養老令の注釈書です。
『をひと』という呼び方から『おっと』になったのは室町時代以降。
『夫』以外に『良人』と書くことも
『おっと』の漢字として、一般的に知られているのは『夫』でしょう。
しかし『良人』と書いて『おっと』と読むことも。
『良人』は『りょうじん』という読み方もします。
『良人』の漢字も、昔から用いられていました。
りょう‐じん リャウ‥【良人】
③ おっと。亭主。
※文華秀麗集(818)中・奉和春閨怨〈朝野鹿取〉「賤妾中心歓未レ尽、良人上馬遠従レ征」
※新撰朗詠(12C前)上「寡妾衣を擣って南楼の月に泣く、良人未だ帰らず〈大江匡房〉」 〔孟子‐離婁下〕
上記を見ても分かるように『良人』は日本だけでなく、中国においても用いられていた漢字です。
上代語では『ひこぢ』とも
男性の配偶者を指す上代語には「ひこぢ」という言葉も。
上代語とは、平安時代よりもさらに古い時代に用いられていた言葉のことです。
じょうだい‐ご〔ジヤウダイ‐〕【上代語】 の解説
上代の言語、また、単語。国語史では、文献的に資料の得られる6世紀末から奈良時代までのそれをいう。
『ひこぢ』は『夫』以外にも『彦舅』という漢字も用いられていました。
『ひこ』は男性を表し『ぢ』は祖父(おほぢ)や伯父(をぢ)にも使われる単語。
つまり『ひこぢ』は男性の尊称や親称として用いられていたのです。
古語で夫は何と呼ばれていた?
『夫』は古語でどのように呼ばれていたのでしょうか?
妻が夫を呼ぶ呼び方は、時代によっても変化しています。
- 江戸時代の呼び方は身分によって異なる
- 明治以降は『夫』が主流
- 戦後に『主人』が普及
- 現代では『夫』または『パートナー』
『夫』の呼び方を時代に分けて、少しずつ見ていきましょう。
江戸時代の呼び方は身分によって異なる
江戸時代はまだ幕府も存在しており、厳しい身分制度がありました。
身分によって、夫を指す言葉には違いがあったようです。
1.年俸1000石以上の主人は「御前様」,その夫人は「奥様」
2.年俸1000石以下の主人は「殿様」,その夫人は「奥様」
3.御目見以下の主人は「檀那(旦那)様」,その夫人は「御新造」
4.さらに下級の御家人の主人は ただの「檀那(旦那)」,でも夫人は「 御新造さん」
御目見以上は『旗本』、御目見以下は『御家人』と呼ばれ、将軍に謁見できるかどうかにも違いがありました。
つまり旗本は武士としても、信頼されている家臣だったということです。
明治以降は『夫』が主流
明治維新で幕府はなくなり、身分制度は廃止されました。
つまり『旗本』や『御家人』といった身分の差がなくなったので、夫の呼び方も分ける必要がなくなったのです。
明治以降は『夫』と呼ばれるのが一般的になりました。
当時は『主人』という表現を、夫に対して用いることはほぼありませんでした。
明治~昭和10年ごろまでは女中奉公などが「主人」と呼ぶ自分を雇っている人との区別をするという背景もあり、配偶者のことは「おっと(夫・良人など)」と呼ぶほうがむしろ主流。国語辞書の「主人」に夫の意味が一般的に載るようになったのも、昭和30年以降だということです。
引用:DRESS HP
戦後に『主人』が普及
上記でも分かるように『主人』が夫を意味するようになったのは昭和30年以降。
昭和30年といえば、太平洋戦争の後になります。
昭和初期から『主人』という表現はあったようですが、当時はそれほど普及していませんでした。
現代では『夫』または『パートナー』
現代において『主人』や『旦那』という呼び方は、減少傾向にあります。
後述しますが『主人』や『旦那』は、上下関係を意味合いに含む言葉です。
そのため、男性を立てる意味でも『主人』や『旦那』が用いられていたのでしょう。
とはいえ、現代では共働きの家庭も増えており、夫婦関係に上下関係はないというのが一般的な考え。
『夫』や『パートナー』など、男女対等の立場を指す言葉が最も多く用いられています。
アンケートでは女性に対して「第三者に話をしているときに、パートナーのことを何と呼びますか」と聞いたところ、最多は「夫」50%でした。
次いで「旦那・旦那さん」25.6%と続き、「主人」は9.1%と少数派。以後、続く回答を見ると「名字・名前」6.1%、「パートナー」と「パパ、父さん、お父さん、とうちゃん、おとうちゃん」が同率の2.4%。わずかに「相方」1.2%、「連れ合い・連れ」0.6%という回答もあり、「夫さん」は0%でした。
相手の呼び方に合わせて、使い分けているという人も多いようです。
『夫』以外の呼び方の由来も解説!
『夫』以外にも、男性の配偶者を指す言葉として『旦那』や『主人』もあります。
『旦那』や『主人』の由来も、合わせて見ていきましょう。
- 『旦那』の由来
- 『主人』の由来
それぞれの言葉の由来について、詳しく解説していきます。
『旦那』の由来
『旦那』は、古代インドで用いられていたサンスクリット語『ダーナ』が由来です。
『ダーナ』はそもそも施しやお布施を指す言葉。
古代インドでは、修行中のお坊さんに『ダーナ(施し)』をする習慣がありました。
お坊さんはこのダーナによって、生活を支えられていたのです。
『ダーナ』は中国や日本に伝わり『檀那』という漢字が充てられます。
『主人』の由来
『主人』という言葉は、中国語に由来しています。
中国語で『主人』は、配偶者ではなく雇用主や主を指す言葉です。
主人
zhǔ・rén名詞
1(客に対し)主人.↔客人.2(財産・権力の)所有者,持ち主,主人公.
3((清末から中華人民共和国成立以前のいわゆる旧社会の言葉)) (使用人に対し)主人,雇い主.
中国から『主人』という言葉が伝わり、日本でも用いられるようになりました。
『夫』『旦那』『主人』の違いは?
『夫』『旦那』『主人』の3つの単語の意味に、大きな違いはありません。
いずれもは男性の配偶者を指す言葉。
しかし3つの大きな違いは、使い方でしょう。
『夫』は自分の配偶者にのみ使える表現。
一方で『主人』や『旦那』は第三者にも使うことができます。
「ご主人」や「旦那様」など、敬称を付けることで、敬意を表すことができるでしょう。
また使う相手やシーンによっても、使う表現が異なります。
それぞれの表現は、下記のように使い分けましょう。
- 公式な場:夫
- 目上の人と話す場合:主人
- 親しい友人と話す場合:旦那
特に『旦那』はカジュアルな表現として使われます。
そのため、目上の人や公式な場では使用を避けるのが賢明でしょう。
まとめ
『夫』の古語は『をひと』という言葉です。
『をひと』の『ひ』が促音化し、次第に『おっと』という呼び方に変化していきます。
昔は『男人』という漢字が使われていました。
夫の呼び方は時代によって変化してきたようです。
- 江戸時代の呼び方は身分によって異なる
- 明治以降は『夫』が主流
- 戦後に『主人』が普及
- 現代では『夫』または『パートナー』
現代と昔では、夫婦の関係にも大きな違いがあります。
『夫』や『旦那』『主人』の意味や由来は下記の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
コメント