「夫の暴力がひどいので夫から離れたい」
「夫が暴力を日常的に繰り返すので、今すぐ離婚したい」
「夫に離婚を切り出せば暴力がひどくなるので、話し合いもできない」
上記のようにお考えではありませんか。
たしかに、家庭内の暴力は外からは見えにくく、誰にでも気軽に相談できる問題ではありません。
夫の暴力が原因で離婚ができるのか知りたいものですよね。
そこで、当記事では次の内容についてまとめました。
- 暴力を繰り返す夫と離婚できるのか
- 離婚できたときに慰謝料は取れるのか
- 暴力を繰り返す夫と離婚したい妻が取るべき行動
当記事を最後までご覧になれば、取るべき行動とあなたや夫の心理を深く理解できますよ。
ぜひ最後までご覧ください。
暴力を繰り返す夫と離婚したい!今すぐ取るべき5つの行動
日常的に暴力を繰り返す夫との生活から一刻も早く抜け出し、離婚したいと思っていませんか。
ただ、具体的にどんな行動を起こしたらいいのかわからない場合もあるでしょう。
今すぐ取るべき5つの行動を紹介します。
- 暴力を受けていることを自覚する
- 身近な人に相談する
- 受けた暴力の証拠を集める
- 保護命令を受ける
- 身の安全を確保する
具体的にどんな行動を取ればいいのか、詳しく解説します。
暴力を受けていることを自覚する
暴力を受けていることを自覚しましょう。
なぜなら夫が暴力をふるうのは「私を愛しているからだ」とか「大したことではない」などと自分に言い聞かせて我慢してしまうことがあるからです。
また家庭内暴力(DV)などの言葉は知っていても、普段は優しい夫がたまに暴力的になるだけだからとか、自分の家庭には当てはまらないなどと思っていませんか。
たとえば月に数回でも暴力ですし、身体を傷つける暴力だけでなく言葉で脅迫したり、必要以上にあなたの行動を管理することも暴力なのです。
身近な人に相談する
身近な信頼できる人に相談してみましょう。
なぜなら「1回だけだから」とか「夫を怒らせた自分が悪い」などというあなたの常識が身近な人のアドバイスで変わることもあるからです。
たとえば親や兄弟友達など身近にいて、あなたや夫をよく知っている人にあなたの身に起きていることを話してみてください。
きっと親身になって聞いてくれるはずです。
受けた暴力の証拠を集める
夫から受けた暴力の証拠を集めましょう。
なぜなら、暴力をふるう夫に離婚を切り出しても、話し合いさえ困難な場合も多いからです。
裁判で離婚を認めてもらうため、夫の暴力の証拠を集めると離婚できる可能性がより高くなります。
具体的な証拠に該当するものは下記です。
- 診断書や病院の受診歴(夫からの暴力と伝える)
- 傷やケガを写真に残す(自分の顔もわかるように撮影する)
- メールや電話の記録(夫の言動や行動を具体的に記録する)
なぜ、証拠が必要なのかというと、離婚請求の際に家庭内暴力があったことを夫に否定されないよう証拠を集めるのです。
そして、夫の暴力がひどくて安心して日常生活が送れないということを立証します。
裁判上の離婚理由「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり裁判所に離婚を認められるでしょう。
たとえば暴力の証拠が不十分だと、離婚の条件を決める際に夫が「離婚はするが慰謝料は払わない」とか「離婚には応じるが養育費は断固拒否」という事例もあります。
保護命令を受ける
夫からの暴力がひどい場合には保護命令を申請しましょう。
なぜなら、夫の暴力を治すためには以下の条件が必要で多くの夫や妻は諦めてしまうからです。
- 夫が妻などに暴力行為をしていることを自覚している
- 夫が自分の暴力に向き合って治そうとしている
- 夫が暴力をやめようとする動機があるかどうか
保護命令とは、夫や妻から身体に対する暴力や生命等に対し脅迫を受けたときに、夫や妻からの申請があれば、加害者である配偶者に対して下記のような命令をします。
たとえば夫があなたや子供、家族に近づかないように命令を発したり、電話等の連絡を禁止する命令を発するのです。
あなたの心身が壊れないうちに保護命令を受けましょう。
命令①:被害者への接近禁止
命令②:被害者への電話等禁止
命令③:被害者の同居の子への接近禁止
命令④:被害者の親族等への接近禁止
命令⑤:被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去
配偶者である相手方が保護命令に違反すると1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
身の安全を確保する
できれば暴力をふるう夫とは距離を置いて別居する方がよいでしょう。
なぜならあなたが心身をすり減らして我慢し、暴力の証拠を集めるために時間をかけるのはおすすめできないからです。
たとえば、夫に証拠を集めたり周辺の人に相談をしていることが知れると、大きな事件に発展する恐れがあります。
- 婦人保護施設
- 警察署
- 配偶者暴力相談支援センター
離婚するなら夫の暴力が裁判上認められるかが重要
暴力をふるう夫は自分の暴力を認めないケースが多く、離婚に合意することは難しいでしょう。
夫が離婚に合意せず、協議離婚が成立しない場合は離婚調停を申し立てることになります。
調停も裁判所で行われますが、話し合いでの解決を目指しているので夫が納得しなければ離婚は成立しません。
次に家庭裁判所に離婚訴訟を提訴します。
離婚訴訟では、離婚をするしないの判断を裁判官が下すことになるので、夫が暴力をふるっていた証拠が立証されると効果的です。
民法770条「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうか
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、一般に婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことをいいます。
もちろん家庭内で暴力行為が行われている時点で、すでに婚姻関係が破綻していて回復の見込みはないといえるでしょう。
それでも、離婚裁判時に夫側に暴力行為があったことを否定されないよう証拠を集めましょう。
たとえば暴力の程度や頻度、期間など詳しく記録してケガをしたら写真を撮るなど、夫からの暴力だということを医師に伝えて診断書を書いてもらうことが重要です。
診断書を書いてもらう際は下記のことがしっかり書かれているかチェックしてください。
暴力を受けてケガをしたら、なるべく早く受診しましょう。
また殴る蹴るなどの身体的暴力だけでなく、大きな声を出して威嚇するなども精神的暴力にあたります。
複数の暴力の証拠を裁判官に示すことで、より婚姻関係が破綻しているということを印象づけることができるでしょう。
たとえば下記のように複数の暴力を立証できると、より効果的です。
- 身体的暴力と浮気(殴る蹴るなどの暴力と浮気など)
- 身体的暴力と経済的暴力(殴る蹴るなどの暴力とお金を入れないなど)
- 精神的暴力と社会的暴力(暴言を吐いて妻の行動を管理するなど)
「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するには具体的な証拠が必要
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、一般に婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことをいいます。
たしかに家庭内で暴力行為が行われている時点で、婚姻関係が破綻して回復の見込みはないといえますが、離婚裁判のときに夫側に暴力行為があったことを否定されないことが重要です。
いつ、どんなとき、どんなことがきっかけで、どのくらいの時間暴力が行われたのかを記録しましょう。
たとえば傷やケガの様子などを写真に収めたり、ICレコーダーなどで音声を録音するなど、またそのときのあなたの気持ちをメモに残しておくことも重要な証拠になります。
録音するときには下記のことに気を付けてください。
- 危険が伴うので慎重に録音する
- 誰が喋っているのかわかるように録音する
- 録音後文字起こしをする
暴力の種類5つを解説
暴力には殴る蹴るだけでなく、さまざまな種類の暴力があるのです。
具体的な例として下記のような暴力があります。
一つ一つ詳しく解説するのでご覧ください。
- 身体的暴力
- 経済的暴力
- 社会的暴力(社会的隔離)
- 精神的暴力(心理的虐待)
- 性的暴力(性的虐待)
身体的暴力
身体的暴力とは殴ったり蹴ったりして身体にダメージを負わせることで、家庭内暴力で最も多く報告されています。
また、殴ったり蹴ったりする行為は、刑法第204条の傷害や第208条の暴力に該当する犯罪行為です。
他にも下記の行為は身体的暴力行為に該当します。
- 手拳で殴る・平手で打つ
- 小突く
- 殴るふりをする
- 物を投げる
- 包丁を突き付ける
- 髪を引っ張る
- 引きずり回す
- 首を絞める
- 高いところから突き落とす
- ケガをしているのに病院に行かせない
身体的暴力は身体を傷つけるだけでなく、「殴るふりをする」「棒や刀などを振り回す」なども直接体には触れませんが身体的暴力にあたります。
下記は身体的暴力の体験例です。
はじめまして。
付き合って3年、結婚して半年。
夫は10歳年上の36歳です。今まで夫にされてきたことをあげます。これはDVですか?
私が悪くて怒られる原因を作っていたとした場合、これはDVとはいいませんか?平手打ち、グーパンチ(多分軽く)蹴る、馬乗りになって顔を床に押しつける、
※あざができたことはありますが骨折などはありません正直、痛いは痛いですが、びびって対抗できないレベルではないです。
なので、夫は手加減しているんだなとは思います。幸せになりたくて結婚したので、誰にも言いたくありません。みんな結婚したことを喜んでくれているからです。例えば究極、浮気したらこれらをされるのは仕方がないことでしょうか?
自分がどれくらいのレベルのことをされているのか知りたくて投稿しました。
投稿者の方は、「あざはできるが骨折はしていない」とか「痛いが対抗できる程度」と書いていますが、身体的暴力にあたります。
「幸せになりたくて結婚したので、誰にもいいたくありません」という一文が印象的です。
経済的暴力
経済的暴力とは必要な生活費を渡さず、自分の趣味に収入の大半を使ったり金銭的な自由を奪われ厳しい束縛を受けるなどの行為を指しています。
なぜなら経済的暴力の被害者は収入のない専業主婦が多く、夫が厳しく家計の管理をしていて妻の自由になるお金が少ないことが原因だと考えられるからです。
たとえば夫に「生活費が足りない」と家計簿を見せても「もっと節約できるだろう」と返されたり「外で働きたい」と話しても「お前が外で働いて役に立つわけない」といわれたりします。
- 生活費を渡すとき土下座をさせる
- レシートや家計簿を必要以上にチェックする
- 妻の給料を取り上げる
- 健康上の問題がないのに働かない
- 洋服などを買わせない
- 妻の貯金を勝手に使う
社会的暴力(社会的隔離)
社会的暴力は、嫉妬や独占欲から妻を職場の人間関係やさまざまな社会とのつながりから排除しようとする行為を指しています。
なぜなら夫は社会的地位や経済力などで弱い者(妻)を支配して、コントロールしたいと考えているからです。
たとえば夫は「妻は社会経験が少ないから守ってあげている」とか「好きだからそばにいて欲しいだけ」などと言って妻を拘束します。
他にも下記のような行為は社会的暴力に該当するのでチェックしてみてください。
- 妻側の家族や友人とのメールや電話を禁止する
- 妻の就労を認めない
- 外出時にはGPS発信機を持たせる
精神的暴力(心理的虐待)
精神的暴力とは大声でどなったり威嚇したり、妻の人格を否定するような暴言や行動監視、また長期間の無視などにより相手の心を傷つける行為をいいます。
夫は妻が屈服するのを見て快感や優越感を感じ、妻が病気で苦しんでいても同情しないなど自己中心的です。
また夫の精神的暴力によって「夫が帰ってくると思うと動悸や息切れがする」「夫といると緊張して手が震える」など不調を訴える妻も急増しています。
さらに精神的暴力によってPTSD(心的外傷後ストレス障害)に至るなど刑法上の傷害とみなされるほどの精神障害に至れば、刑法上の傷害罪として処罰されることもあるでしょう。
他にも下記のような行為は精神的暴力行為に該当するのでチェックしてみてください。
- 「誰のおかげで暮らせているんだ」「甲斐性なし」などという
- 人前でバカにしたり、命令的な口調でものをいう
- 大切にしているものを壊したり、捨てたりする
- 子どもに危害を加えるといっておどす
性的暴力(性的虐待)
性的暴力とは、妻が嫌がっているのに性的行為や中絶を強要したり、避妊に協力しないなどの行為をいいます。
夫婦間の性交であっても刑法第177条の強制性交等罪に当たる場合があり、暴行・脅迫を用いた性交が許されるわけではありません。
他にも下記のような行為は性的暴力に該当します。
- 見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌をみせる
- 夫の要求に応じないと不機嫌になる
- 性的行為の際に痛めつけたり、侮辱したりする
暴力をふるう夫の特徴5つ
暴力をふるう夫には特徴があり、すべて同じ性格や同じ行動を取るわけではありませんが共通しているといわれています。
具体的な特徴としては下記のとおりです。
- 外面がよく、愛想がよい
- プライドが高い
- 気分の浮き沈みが激しい
- 独占欲が強く嫉妬深い
- 暴力を受けてきた
一つ一つ詳しく解説します。
外面がよく、愛想がよい
暴力をふるう夫は外面がよく、会社や地域などでは愛想のいい温厚で優しい夫という印象をもたれています。
なぜなら暴力をふるう夫には周囲から「褒められたい」「よく見られたい」と思っていて周りの評価ばかりを気にして、都合良くいい人を演じているのです。
そのため妻も周りに言い出せず、自分が悪いのではないかと思ってしまうのでしょう。
プライドが高い
暴力をふるう夫は自尊心が強く、仲間内のちょっとしたからかい半分のジョークなどにも反応して、怒りをあらわにすることがあるのです。
たとえば普通なら笑って済ます冗談であっても、夫にとっては自分をバカにしたとか貶めたと思って必要以上に相手を攻撃します。
なぜなら自分の価値観が常に正しいと思っていて、自分の思った通りにならないとイライラしたり自分を否定されたと感じて怒り出すのです。
気分の浮き沈みが激しい
暴力をふるう夫は、ほんの些細な出来事に怒り狂ったようにどなったり物を投げつけたりします。
ところが、怒りが冷めると急にやさしくなったりして気分の浮き沈みが激しいのも特徴です。
なぜなら気に入らないことがあって急にカッとなって暴力をふるうのですが、ケガをしている妻を見て、かわいそうになりやさしくしたり謝罪したりします。
妻の側も、平謝りで涙ながらにすがる夫を見て「もうしないと反省してくれたから」とか「以前の夫に戻ってくれるのなら」と同情し許してしまうのです。
独占欲が強く嫉妬深い
暴力をふるう夫は妻を暴力で支配したいという願望があり、必要以上に管理したり束縛したりすることで満足しています。
なぜなら妻を所有物のように常に自分のそばに置いて支配し、優越感に浸りたいのです。
たとえば、外出のたびに行き先や帰宅時間の制約を課したり、約束の時間に帰ってこないと途端に不機嫌になったりします。
暴力を受けてきた
暴力を受けたすべての人間が、そのまま家庭内暴力を繰り返すわけではありませんが、夫が暴力を受けて育った可能性もあります。
なぜなら暴力が存在する家庭で育つと、何かあれば暴力で解決することが当たり前になり自分が持った家庭でも暴力をふるってしまう傾向があるからです。
たとえば、幼い頃から「お金を稼いでくる人間が一番偉い」「家長である俺の言うことが正しいんだ」と言われて暴力を受けて成長し家長になったとき同じ行動を取ることもあり得ます。
夫の暴力を受けている妻の7つの特徴
暴力を受けている妻が同じ性格や特徴を持っているわけではありませんが、共通する特徴があるといわれています。
具体的な特徴としては下記のとおりです。
- 責任感が強い
- 依存する傾向が高い
- 優柔不断
- 経済的な自立が難しい
- 自己評価が低い
- 我慢強い
一つ一つ詳しく解説します。
責任感が強い
暴力を受けている妻は、責任感が強く「結婚したのだから、自分ががんばって婚姻関係を続けなければならない」と考える傾向があります。
また、家を守りたいという責任感から「自分が夫を支えなければいけない」とか「自分がいないとこの人はだめだ」と思って暴力的な夫を受け入れてしまうのです。
さらに妻としての責任感の強さから、夫の暴力を我慢しているような点があるかもしれません。
ぜひ、自分の気持ちを整理してください。
依存する傾向が高い
暴力を受けている妻の中には、恋愛依存体質で「夫がいないと生きていけない」と考えがちで暴力を受けても夫への依存心が消えない方がいます。
なぜなら「嫌われたくないから言いなりになる」という気持ちが働き「嫌われて捨てられたらどうしよう」という恐怖心が働くのです。
たとえ暴力をふるわれても、嫌と強く言えないし夫から離れる勇気もなかなか持てません。
優柔不断
夫から暴力を受けている妻の多くは夫への依存度が高く、ひどい暴力を受けているのにも関わらず夫を突き放すことができないのです。
暴力をふるう夫のことも「本当は優しい人なのでは」とか「今日は何かあったのでは」などと考えて優しくしてしまうことがあります。
また暴力をふるったあとに急にやさしくなったり、暴力行為を反省するようなそぶりを見せて謝罪してきたりするので「やさしかった昔の夫にもどったのでは」などと勘違いしてしまうのです。
経済的な自立が難しい
暴力を受けている妻は専業主婦などで自分の収入がない、もしくは少なくて夫の収入に依存した生活を送っている方が多いといいます。
なぜなら夫に「外で働くことを許してもらえない」とか、または家計の管理を厳しくされているからです。
そのため暴力をふるわれても、別居や離婚を考えると経済的な不安から夫の暴力を我慢して現在の生活を継続することを選んでしまうのです。
自己評価が低い
暴力を受けている妻は、非難される原因もないのに夫から「お前のせいだ」とか「お前がバカだから」などといわれ続け自己肯定感をもたなくなります。
また、夫から暴力を受けている被害者であるにもかかわらず「暴力をうけるのは自分にも悪いところがあるのに違いない」と思ってしまうのです。
さらに暴力ふるわれている尽くす妻は「夫の役に立つ妻でなければ愛される資格がない」と思い込んでしまいます。
我慢強い
暴力を受け続けている妻の中には、何十年も我慢している方がいます。
我慢をしてしまう理由はさまざまですが、中でも子どものためと考える妻は少なくありません。
たとえば、「子どもを片親にしたくない」とか「離婚して子どもの環境が変わってしまうのがかわいそう」などと思うのでしょう。
夫の暴力が原因の離婚で慰謝料は取れる?また相場は?
暴力をふるう夫との離婚で、慰謝料は請求可能です。
ただ、夫の支払い能力や資産状況には個人差があり、暴力の程度や環境もそれぞれですが相場は50〜300万円といわれています。
また本来であれば暴力をふるう夫が被害者である妻に対し謝罪が必要ですが、夫は自分を正当化するので妻に謝罪する可能性は低いでしょう。
離婚慰謝料は2種類
夫婦が離婚する原因が主にある側は、他方の配偶者側に対して離婚にかかる慰謝料を支払う義務を負うことになります。
離婚慰謝料は下記の2種類です。
離婚自体慰謝料
離婚によって配偶者の地位を喪失するという精神的苦痛に対する損害賠償
離婚することだけでも精神的なダメージがあるということです。
離婚原因慰謝料
離婚の原因となった有責行為による精神的苦痛に対する損害賠償
つまり、離婚原因になった暴力や浮気などの精神的苦痛に対する慰謝料です。
離婚慰謝料の相場は50~300万円!慰謝料が高額になる7つの要素
暴力が原因で離婚になった場合、夫の支払い能力や資産状況など個人差がありますが一般的な相場は50~300万といわれています。
また、慰謝料が高額になるケースは下記のとおりです。
- 暴力の回数が多い
- 暴力の期間が長い
- 暴力被害者の落ち度が少ない
- 暴力によるケガや障害の程度が重い
- 暴力被害によってうつ病になった
- 養育費が必要な子どもの人数
- 暴力加害者の年齢が高い
一つ一つ詳しく解説します。
離婚条件を決めることは非常に重要です。
「とりあえず早く離婚成立を」と離婚届を出してしまうと、慰謝料を取れない場合があるので注意してください。
要素①:暴力の回数が多い
暴力をふるう夫と離婚した場合の慰謝料は、暴力を受ける回数が多い方が慰謝料は高額になります。
もちろん週に1回と週に3回では多い方が高額になるので、そのためにも暴力を受けた回数を証明できるメモなどが重要です。
たとえば、携帯の録音機能を使って音声で記録を残すのもよいでしょう。
要素②:暴力の期間が長い
暴力をふるう夫と離婚した場合の慰謝料は、暴力を受けている期間の長い方が慰謝料が高額になります。
なぜなら、身体的苦痛や精神的苦痛に耐えてきた期間が長いのですから慰謝料は高額になるのです。
たとえば何がきっかけで暴力が始まったかなど期間を示すこともできるので、できるだけ正確な記録を残しましょう。
要素③:暴力被害者の落ち度が少ない
暴力をふるう夫と離婚した場合の慰謝料は、妻の落ち度が少ない方が慰謝料は高額になります。
なぜなら暴力とは「支配と被支配」の関係になっていることを指すからです。
たとえば、妻が夫を激しく挑発したり、掃除や片付けを怠り注意した夫と口論になってつい手が出たなど妻側にも多少の落ち度があると慰謝料は低くなるでしょう。
要素④:暴力によるケガや障害の程度が重い
暴力をふるう夫と離婚した場合の慰謝料は、ケガや障害が残ってしまったなど程度が重い方が慰謝料は高くなります。
なぜなら妻は離婚後もケガや障害をかかえて生きていかなくてはならないからです。
たとえば暴力をふるわれケガをしたら、必ず医療機関を受診し「夫からの暴力」だということを医師に伝えた上で診断書を書いてもらいましょう。
また医療機関の受診歴も証拠になるので、正確に記録しておくことが重要です。
要素⑤:暴力被害によってうつ病になった
暴力をふるう夫と離婚した場合の慰謝料は、暴力被害によってうつ病になったなど精神被害が大きいと慰謝料は高額になります。
なぜなら暴力による心身への影響は大きく、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にうつ病を合併することもあり深刻な状況なることもあるからです。
妻は夫と離婚してもPTSDやうつ病などの精神疾患がすぐ治るというわけはなく、専門的な治療が必要となります。
要素⑥:養育費が必要な子どもの人数
暴力をふるう夫と離婚した場合の慰謝料は、離婚の際、養育費が必要となった子どもの人数が多い方が慰謝料も高額になります。
なぜなら子どもを養育する必要があるにもかかわらず、離婚をすることになり養育することが困難になるからです。
もちろん子どもの養育費は慰謝料とは別に請求することができます。
要素⑦:暴力加害者の年齢が高い
暴力をふるう夫の年齢が高いほど慰謝料が高額になる傾向があります。
なぜなら暴力をふるう年齢の高い夫との生活の中には「支配と被支配」の期間が長く存在していたのではないかと想像できるからです。
日本では、夫による暴力の原因として「家父長制度」や「性差別的な価値観」が指摘されています。
そのため特に年齢の高い夫の方が「お金を稼いでくる人間が一番偉いんだ」「家長である俺の言うことが正しいんだ」という気持ちが強いようです。
夫から暴力を受けた妻の後遺症とはどんなものがある?
繰り返される暴力は、被害者の心身に悪影響をもたらします。
なかでも心配な妻の後遺症は不安感や恐怖心、食欲不振、頭痛やめまいなど不快な症状です。
今は安全な環境に暮らしていても、夫と同じくらいの年齢の人を見かけたりすると動悸が激しくなり、恐怖心で震えが止まらなくなったりします。
夫から暴力を受けた妻の後遺症の例は下記の3つです。
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 不安障害や気分障害、うつ病
- 面前DV
一つ一つ解説していきます。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSDとは命の危機に陥った経験や、ショッキングな出来事に遭遇することによって心的外傷=トラウマが発生して起こる病気です。
暴力をふるわれた妻は、辛い経験がトラウマになってフラッシュバックが起こり激しい動悸やめまい、呼吸が苦しくなったり体が強ばる、冷や汗をかくなどの症状が出ることがあります。
不安障害や気分障害、うつ病
不安障害は突然大きな不安や心配、恐怖に襲われ、生活に様々な支障をきたすようになる状態です。
また、気分障害は気分の浮き沈みが激しく日常生活に支障がでてしまう疾患のことをいいます。
なかでもうつ病は一日中気分が落ち込んで、何をしても楽しめないといった精神症状とともに不眠や食欲不振、疲れやすいなどの身体症状が表れるということです。
面前DV
面前DVとは、18歳未満の子どもの目の前で、配偶者や家族に対してさまざま暴力をふるうことをいいます。
DVを目撃した子どもは、たとえ赤ちゃんでも強いストレスを感じているのです。
さらに多くの子どもが家族間の不和は自分に責任があると考えたり、被害者である母親を守れなかったことに対して罪悪感を持ちます。
この罪悪感が心的外傷(トラウマ)となり子どもの心と脳を蝕んでいくのです。
夫から暴力を受けた妻が身を守る方法
夫から暴力を受けた妻が身を守る方法とは、警察や自治体の相談窓口に相談しましょう。
なぜなら暴力をふるう夫は、自分の暴力を正当化して妻の心身への負担や苦痛を理解することはないからです。
夫から暴力を受けた妻が身を守る方法3つ紹介します。
- すぐ夫から逃げたい場合:警察署や交番にかけこむ
- 夫が近寄ってこないようにしたい場合:法令や制度を利用する
- つきまとい等のストーカー行為に困った場合:ストーカー規制等に基づく警告及び禁止命令等
逃げることは決して恥ずかしいことではありません。
一つ一つ解説していきます。
すぐ夫から逃げたい場合:警察署や交番にかけこむ
緊急の場合は110番に通報するか、最寄りの警察署、交番等に駆け込みます。
警察webサイト
夫が近寄ってこないようにしたい場合:法令や制度を利用する
暴力をふるう夫が妻に近寄ってこないようにしたい場合、妻が安全な生活を確保するための支援として、加害者が被害者に近づくことを法的に禁止することができます。
配偶者暴力防止法に基づく接近禁止命令
裁判所が被害者の申立てに基づき、6か月間、配偶者である加害者に対し被害者やその同居する未成年の子につきまとうことや住居や職場等の近くを徘徊することを禁止します。
申立て先:地方裁判所
配偶者暴力防止法に基づく退去命令
裁判所が被害者の申立てに基づき、2か月間、配偶者である加害者に対し被害者と生活の本拠を共にする住居から退去することや住居の付近を徘徊してはならないことを命じます。
申立て先:地方裁判所
ストーカー規制等に基づく警告及び禁止命令等
加害者による「つきまとい等」や「ストーカー行為」に対し、警察が警告や禁止命令等の措置を講じます。
民事保全法に基づく仮処分命令民事保全法に基づく仮処分命令
加害者が被害者に接近することなどを禁止することができます。
(出典記載例)
出典:内閣府ホームページ (https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/index.html)
夫の暴力に悩んでいる妻のための相談窓口
夫の暴力に悩んでいても世間体が気になったり、誰に相談していいかわからず困っていませんか。
家庭内の問題は夫やあなたを知らない第三者の方が、冷静で適切なアドバイスをくれるかもしれません。
ぜひ、活用してください。
まとめ
暴力をふるう夫との離婚は、裁判所で「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められれば離婚できます。
「婚姻を継続し難い重大な事由」と認めてもらうには、受けた暴力の証拠を集めましょう。
証拠の残し方は下記のとおりです。
- メモをとる
- ケガや傷の写真を残す
- 携帯の録音機能などで音声メモ残す
夫の支払い能力や資産状況にもよりますが、暴力が原因で離婚したときの慰謝料の相場は50~300万円です。
さらに慰謝料が高額になる要素7つとは下記のとおりです。
- 暴力の回数が多い
- 暴力の期間が長い
- 暴力被害者の落ち度が少ない
- 暴力によるケガや障害の程度が重い
- 暴力被害によってうつ病になった
- 養育費が必要な子どもの人数
- 暴力加害者の年齢が高い
ただ、夫の暴力がひどくて身の危険が高まっている場合は、今すぐこちらを参考にして行動してください。
身の危険が迫っている場合、今すぐ取るべき行動は下記のとおりです。
- 身の安全を確保する
- 身近な人に相談する
- 暴力の証拠を集める
- 公的機関に相談する
DVは人権侵害です。
人権とは、人間が人間らしく生きるために持っている当然の権利です。
そして夫婦とはお互いを尊重し、協力し助け合いながら生活し、共に暮らす生活の中に「支配や被支配」は存在しません。
勇気を出して、まずは一歩を踏み出して相談してください。
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