「夫の苗字にしたくない場合はどうしたらいい?」
「夫婦で別の苗字にするのはあり?」
「夫の苗字を名乗らない場合のデメリットは?」
といったお悩みを抱えていませんか?
生まれてから名乗ってきた自分の苗字ですから、愛着があるのも当然です。
結婚するからといって、自分の大切な苗字を失いたくないと感じる方もいるでしょう。
当記事では
- 夫婦別姓は原則認められていない
- 夫の苗字にしたくない!夫婦別姓にする方法は?
- 夫の苗字を名乗らないことで考えられるデメリット
といった内容を徹底解説していきます。
夫の苗字にしたくないとお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
最後までお読みいただければ、夫と別の苗字にすることで考えられるメリットやデメリットが分かるはずです。
夫婦別姓は原則認められていない
結婚後も夫の苗字を名乗らず、姓を変えないことを『夫婦別姓』といいます。
選択的夫婦別氏制度とは夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度です。なお、この制度は一般に「選択的夫婦別姓制度」と呼ばれることがあります。
夫婦別姓制度はアメリカやイギリスなど日本以外の多くの国で、採用されている制度。
これまでたびたび「選択的夫婦別姓」を導入すべきかどうかの議論は、行われてきました。
法務省の調査でも、約3割近い人が「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」と返答しています。
令和3年に実施した「家族の法制に関する世論調査」の結果では、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」と答えた方の割合が27.0%、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」と答えた方の割合が42.2%、「選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい」と答えた方の割合が28.9%となっています。
とはいえ、反対意見も多く、現段階では法改正にまでは至っていません。
夫の苗字にしたくない!夫婦別姓にする方法は?
法律で夫婦同姓が認められていないとはいえ、自分の苗字を変えたくない方もいることでしょう。
どうしても夫の苗字にしたくない場合は、下記の方法が有効です。
- 事実婚にする
- 通称として前の姓を使用する
- 婿入りしてもらう
それぞれの方法を具体的に見ていきましょう。
事実婚にする
最初は「事実婚にする」方法です。
事実婚とは、婚姻届けを提出せずに事実上夫婦として生活することを指します。
「結婚している」という意識を当事者はもっているが、婚姻の届出をしていないために、法律上は婚姻とされない共同生活をしている状態をいう。
そのため、二人が別々の苗字を名乗ることも可能なのです。
実際、事実婚を選んだ夫婦のうち、9割近い女性が「夫婦別姓を通すため」と回答しています。
事実婚を選んだ理由(複数回答)
(善積京子『近代家族を超える』青木書店、1997年)
• 夫婦別姓を通すため(女性89.3%/男性64.0%)
• 戸籍制度に反対(女性86.8%/男性70.7%)
• 性関係はプライベートなことなので、国に届ける必要を感じな
い(女性70.8%/男性59.7%)
• 夫は仕事、妻は家事という性別役割分業から解放されやすい
(女性62.1%/男性36.7%)
• 相手の非婚の生き方の尊重(女性26.0%/男性63.3%)
※女性319人、男性300人
通称として前の苗字を使用する
「通称として前の姓を使用する」人も増加傾向にあるようです。
最近では、婚姻前の苗字を通称として使用する制度が社会的に広まりつつあります。
たとえば住民票やマイナンバーカードには、旧姓の併記が可能です。
また、職場では苗字を変えず、婚姻前の苗字のままで働くという人も。
婿入りしてもらう
最後は「婿入りしてもらう」という方法。
夫婦別姓は認められていませんが、どちらの苗字にするかどうか、規定があるわけではありません。
つまり、夫の苗字にしたくないのであれば、夫が妻の苗字にすることも可能。
もちろん夫の同意が必要になりますので、勝手に変更することはできません。
夫の苗字を名乗らないことで考えられるデメリット
夫の苗字を名乗らないことで、いくつかのデメリットもあることを覚えておかなければなりません。
今回は「事実婚」で夫婦別姓をする場合のデメリットを考えていきましょう。
主に考えられるデメリットは下記の通り。
- 子供への影響
- 相続時のトラブル
- 税金の優遇が受けられない
- ローンを組む際のデメリット
- 世間体が悪い
それぞれのデメリットについて、具体的に解説していきます。
子供への影響
最初に考えられるのは「子供への影響」です。
事実婚の場合、法律上は夫婦ではなくなり、戸籍も別になります。
つまり、子供が非嫡出子になってしまうということ。
非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上で婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子供のことです。
子供は母親の戸籍に入り、父親との関係が法律的に認められません。
子供の大好きなおじいちゃんおばあちゃんでさえ、片方は戸籍上親族とは認められないことに。
将来的に子供が寂しい思いをする可能性もあるでしょう。
相続時のトラブル
次に考えられるのは「相続時のトラブル」です。
法律上、夫婦と認められていれば、夫に万が一のことがあった時に妻は相続人となります。
しかし、事実婚の状態では、いくら妻であっても法定相続人にはなれないのです。
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。
税金の優遇が受けられない
次に「税金の優遇が受けられない」というデメリットです。
戸籍上の夫婦であれば、配偶者控除などの措置を受けることができます。
しかし、事実婚の場合はそのような優遇措置を受けることができません。
たとえば、夫の身内が亡くなった場合、夫婦であれば忌引き休暇を取ることも可能。
しかし、事実婚の場合は認められないことも多く、会社を休みづらくなるでしょう。
ローンを組む際のデメリット
「ローンを組む際のデメリット」もあります。
住宅ローンの中には「ペアローン」や「連帯債務型」という制度があり、夫婦で借り入れることも可能です。
とはいえ、残念ながら事実婚の場合は、戸籍上の夫婦ではないのでペアローンが利用できません。
購入だけでなく、賃貸住宅の場合も不利になることがあります。
内縁関係であることを示す書類や証人が必要になる可能性があるため、通常の夫婦よりは手続きが面倒になるでしょう。
世間体が悪い
最後は「世間体が悪い」ことが挙げられます。
昔よりも一般的になってきたとはいえ、まだまだ事実婚を受け入れられない人も少なくありません。
何かあるのではと邪推されたり、好奇の目で見られることもあるでしょう。
特に両親や祖父母など、世代が上の人にとっては世間体が気になることも多いようです。
と催促されることもあるでしょう。
夫の苗字にならないと得られるメリット
夫婦別姓を取ることで、得られるメリットもあります。
主に考えられるメリットは下記の通り。
- 変更手続きが不要
- 自由な立場でいられる
- プライバシーの保護に繋がる
それぞれのメリットを、具体的に見ていきましょう。
変更手続きが不要
最初に挙げられるのは「変更手続きが不要」という点です。
入籍して、苗字が変わると、実は何かと面倒な手続きが多いもの。
時間と手間がかかるので、忙しい人にとってはストレスになるでしょう。
ネットショッピングの登録情報や会員カードの情報など、細かなところでも氏名変更の手続きは発生します。
夫婦別姓であれば、上記のような変更手続きをする必要はありません。
自由な立場でいられる
事実婚であることにより「自由な立場でいられる」というメリットも。
日本の場合は特に、伝統的な親戚付き合いが求められることもあります。
「嫁」という立場に捕らわれず、自由な状態でいられるというのもメリットのひとつでしょう。
プライバシーの保護に繋がる
夫婦別姓を取ることで「プライバシーの保護に繋がる」という見方もあります。
結婚して姓が変われば、結婚報告をしていなくても、結婚の事実が周知されてしまうでしょう。
反対に、離婚した際も周りに知られてしまう可能性があるのです。
また、戸籍に結婚歴が残るというのは、言い換えてみれば国家に情報が管理されているということ。
まとめ
現代の日本において、夫婦別姓は認められていません。
夫の苗字を名乗りたくないのであれば、下記の対応が必要になるでしょう。
- 事実婚にする
- 通称として前の姓を使用する
- 婿入りしてもらう
とはいえ、夫の苗字を名乗らないことで、下記のようなデメリットもあるので覚えておくべきです。
- 子供への影響
- 相続時のトラブル
- 税金の優遇が受けられない
- ローンを組む際のデメリット
- 世間体が悪い
選択的夫婦別姓については、今でも議論が交わされています。
今後は変わっていく可能性もあるでしょう。
パートナーと意見をすり合わせながら、慎重に話し合いを進めていきましょう。
夫婦同姓の歴史は、下記の記事でも解説していますのでぜひ参考にしてください。
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