「理由がなくても離婚できる?」
「離婚したいけど決定的な理由がない」
「みんなどんな理由で離婚するの?」
上記のような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
DVや不貞行為といった決定的な理由があるわけではないけれど、一緒にいるとイライラしてしまうその気持ち、よくわかります。
このままずっと一緒に生活するなんて無理、と離婚を考えることもありますよね。
そこで当記事では下記内容についてまとめました。
- 決定的な理由がなくても離婚できるのか
- 離婚理由の作り方
- 理由がない離婚で慰謝料が発生するか
世間の夫婦が離婚したいと思う理由ランキングについても調査していますので、ぜひ参考にしてください。
離婚したい!決定的な理由がないけど離婚できる?
DVや不貞行為などの決定的な理由がなくても離婚はできますが、離婚の方法によっては法律で定められた理由がないと難しい可能性もあります。
離婚の種類は、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚の4つあります。
このうち、協議離婚、調停離婚、審判離婚は離婚することについて双方同意することにより成立するものです。他方、裁判離婚は当事者の意思にかかわらず、裁判所が強制的に離婚を認めるものです。
引用元:名古屋総合リーガルグループ
上記のように離婚には種類があり、お互いが話し合って離婚が成立すれば決定的な理由がなくても離婚できますが、裁判などでは法的な離婚理由が必要です。
どのような場合に離婚ができるのか、理由が必要なのはどういったときなのか詳しくみていきましょう。
お互いが合意していれば離婚できる
夫婦がお互いに話し合いで合意すれば、決定的な理由がなくても離婚できます。
日本の離婚で90パーセントを占めるのが双方合意で成立する「協議離婚」、協議離婚で話がまとまらなかった場合に調停委員立ち会いのもと話を進める「調停離婚」が全体の9パーセント程度です。
協議離婚や調停離婚で離婚全体の99パーセントを占めていることから、お互いが合意していれば明確な理由がなくても離婚が成立する可能性は高いといえるでしょう。
裁判で離婚するには理由が必要
協議や調停で相手が離婚に合意しない場合、裁判所に申し立てて離婚を求めることになりますが理由のない離婚を成立させるのは難しいでしょう。
裁判で離婚するには民法で定められた離婚原因が必要なので、下記のような裁判上の理由がないと離婚は認められません。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
婚姻関係を続けていくのが困難だという明確な理由がなければ、裁判離婚は難しいということがわかります。
理由がないけれどどうしても離婚したいのであれば、裁判離婚に発展する前に話し合いで離婚することが必要です。
離婚したいと思う理由ランキングを調査
世間の夫婦がどのような理由で離婚しているのか、離婚理由ランキングを調査しました。
裁判所の司法統計(令和2年度 19 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所)より、調停を申し立てた申立人の離婚理由をまとめたものが下記ランキングです。
- 性格が合わない
- 精神的に虐待する
- 生活費を渡さない
男女別のランキングでは2位以降については順位が異なってきますが、1位の「性格が合わない」は男女ともにダントツで多い理由でした。
ランキング上位の理由について詳しくみていきましょう。
ランキング1位:性格が合わない
「性格が合わない」いわゆる「性格の不一致」が離婚理由ランキング1位です。
夫婦といえども育ってきた環境の違う二人が一緒に生活をはじめることになるので、考え方や価値観すべてが同じというわけにはいきません。
交際していた時には気付かなかったお互いの違いが、一緒に生活をはじめることで見えてくることもあるでしょう。
離婚理由として「性格が合わない」ことをあげている人の多くは決定的な離婚理由があるわけではなく、生活するうえで生まれたズレによって離婚しているケースが多くあります。
- 性格の不一致
- 価値観の違い
- 金銭感覚のずれ
はじめは我慢できていたことも時を経るにつれて我慢が限界をむかえ、夫婦生活を続けるのは難しいと判断して離婚する夫婦が多いようです。
ランキング2位:精神的に虐待する
身体への暴力ではなく言葉や行動によって精神的に相手を追い詰めるモラハラなど、精神的な虐待に耐えかねて離婚するケースも多くあるようです。
精神的虐待には下記のようなものがあげられます。
- 相手に対して暴言を吐く
- 自分の意見を押し付ける
- 相手の話を聞かない、否定する
- 異常に束縛する
精神的虐待を受けた方は自分を全否定されたと感じて精神的に追い詰められてしまい、結果的に夫婦生活の継続が難しいと判断して離婚へとつながります。
ランキング3位:生活費を渡さない
夫婦のどちらかが専業主婦(主夫)の場合など、生活費を相手に渡さないことで生活が困難になってしまい離婚するケースです。
夫婦は一緒に暮らし互いに助けあって生活することが法律に義務付けられているため、生活費を渡さないことは「悪意の遺棄」にあたります。
悪意の遺棄とは、夫婦間の義務に不当に反すること、正当な理由なく夫婦間の義務を履行しないことであり、離婚原因となります(民法770条1項2号)。
引用元:弁護士法人中部法律事務所
生活費を渡さないことは夫婦の共同生活に協力しない、配偶者との生活を見捨てることを意味するため離婚事由に該当します。
離婚して法的に手続きをすることで配偶者へ財産分与や慰謝料の請求が可能な場合もあるため、離婚を決断する方も多いようです。
決定的な理由がなくても離婚する人は多い
法的に決定的な理由ではなくても「性格が合わない」を離婚理由としてあげている人が一番多いことがわかりました。
法律などで定められた離婚の理由に該当しなくても、日常の中で一緒に生活していくのは難しいと感じて離婚を考える人は多くいます。
相手への離婚理由の伝え方などによっては協議や調停で話し合いがまとまらず、離婚成立が難しくなってしまうこともあるので注意しましょう。
離婚したいときの理由の作り方とは
離婚したいと考えたとき、どんな離婚方法をとったとしても相手に伝える離婚理由は必要です。
「理由はないけどなんとなく離婚したい」と伝えても当然離婚は難しいですよね。
理由がないといっても、潜在的に頭の中には一緒にいたくない、離婚したいと思う理由があるはずです。
理由を考える順序としては下記2点がポイントになります。
- まずは夫婦生活における不一致を考える
- 不一致から離婚したい根拠を明確にする
離婚理由の作り方を詳しくみていきましょう。
まずは夫婦生活における不一致を考える
はじめに考えたいのは夫婦生活の中で、相手と「不一致」と感じることがなにかをあげてみましょう。
- 価値観の不一致
- 金銭感覚の不一致
- 生活時間の不一致
- 性の不一致
価値観があわないと生活の中で大切にするポイントがズレてしまったり、感情の共有ができなかったりとお互いのイライラが募ります。
金銭感覚のズレは生活費に直結し、将来の貯蓄や子どもの養育に関わる費用にまで影響を与える可能性も。
他にも夜勤などで生活時間が違えば体調を崩す原因にもなりますし、女性と男性でセックスへの考え方が違えば性の不一致が発生してしまいます。
夫婦生活を継続するうえで必要なものが一致していないことは、十分に離婚を考える理由になるのではないでしょうか。
不一致から離婚したい根拠を明確にする
夫婦関係における不一致がみえてきたら、あいまいだった離婚したい根拠を明確にしなければいけません。
「なんとなく一緒にいるとイライラする」を明確にするなら、「あなたの○○な考え方があわない」「理解しようとしたが難しい」など離婚の意思を含めてきっぱりと伝えることが重要です。
離婚をしたいと思う理由はさまざまですが、離婚は夫婦二人の問題なので相手にも自分の気持ちを理解してもらえるよう明確な言葉を用いて、あいまいな表現は控えることが大切です。
感情ではなく理論立てることが重要!
感情だけで「あれが嫌だ」「これが嫌だ」と考えてしまうと、うまくまとまらないことが多いので離婚理由は感情ではなく理論立てて考えることが重要です。
相手が男性の場合には感情で話をしても受け入れることが難しいため、論理的に話を進めた方が理解してもらいやすいという特徴もあります。
相手にきちんと理解して合意してもらうための離婚理由を作るなら、感情的にならずに順序立てて考えましょう。
理由がない離婚で慰謝料は発生する?
理由がないけれど離婚したい場合、慰謝料は発生するのでしょうか。
そもそも慰謝料とはどんな状況で発生するのか確認してみましょう。
離婚の際の「慰謝料」とは、離婚によって被る精神的苦痛に対して支払われるお金のことです。
引用元:アディーレ法律事務所
慰謝料は離婚の際に絶対に支払いが必要になるものではなく、離婚の原因を作った配偶者に対して精神的苦痛をうけた他方の配偶者が請求できるものです。
決定的な理由がない離婚を切り出したときに、離婚をしたいと言った方が慰謝料を請求されることはあるのか詳しくみていきましょう。
性格が合わないことが理由なら慰謝料は発生しない
性格が合わないことを理由に離婚する場合、慰謝料は発生しないと考えてよいでしょう。
性格の不一致や価値観の相違などはDVや不貞行為と違って、どちらか一方が悪いわけではなく被害者・加害者にあたらないため慰謝料の請求は難しいとされています。
慰謝料の請求が認められるのは相手に不貞行為や、DVなどの有責行為があったかどうかがポイントです。
自分に違法行為がある場合には慰謝料が発生する場合も
性格の不一致などを理由に離婚する場合、どちらか一方に離婚の理由があるわけでないので慰謝料は発生しませんが、自分に違法行為があれば慰謝料は発生する可能性があります。
違法行為とは下記のようなものがあげられます。
- 不貞行為
- DV
性格の不一致を理由に離婚しようとしていても、自分に違法行為がある場合には相手から慰謝料を請求される可能性は十分にあるので覚えておきましょう。
ただし、慰謝料は精神的苦痛を受けた側が相手に対して請求するものなので、違法行為をしていたとしても請求されなければ支払い義務は発生しません。
離婚前に考えておくべき5つの注意点
理由がないけれど離婚したいと思ったら、まずは離婚することによるリスクや注意点について考えておきましょう。
離婚前に考えておくべき注意点を5つまとめました。
- 経済的に苦しくなる可能性を考える
- 子どもに与える影響について考える
- 親権を取得する場合は準備が必要
- 財産分与について調べておく
- 未練や後悔がないかもう一度検討する
一度離婚を切り出してしまうと簡単に戻ることはできません。
離婚してから後悔しないように、離婚前にデメリットについても考えることが大切です。
経済的に苦しくなる可能性を考える
離婚によって収入が減るなど、経済的に苦しくなる可能性を考えることが必要です。
今までは配偶者の収入もしくは夫婦二人分の収入で生活していたものが、離婚後は自分一人の収入で生活のすべてをやりくりしなければなりません。
財産分与などの可能性はありますが、日々生活していくための収入が減ることにかわりはないので、離婚することで金銭的な影響があることをしっかりと認識しておきましょう。
子どもに与える影響について考える
子どもがいる離婚の場合、離婚が子どもに与える影響についても考えておかなければなりません。
離婚した場合、父親もしくは母親のどちらか一方が子どもを引きとり育てることになります。
子どもへの影響としては母子(父子)家庭になることのさみしさや、心の問題につながる可能性も考える必要があるでしょう。
子どもの年齢にもよりますが、離婚が子どもに与える影響はとても大きいため十分に注意が必要です。
親権を取得する場合は準備が必要
子どもがいる離婚の場合、親権を取得したいと考えているのであれば収入・時間などの子どもと生活する基盤が整っていることをアピールできるよう準備することが大切です。
親権者は,まずは父母の協議によって定めることとされています。子どもの監護・教育に関する事項(進学,医療等)や,財産に関する事項について,父母のどちらが決定するのが子どもの利益となるのかという観点から,しっかりと話し合うようにしてください。
引用元:法務省
親権者が夫婦の話し合いで決まらず調停や審判で決まる場合には、さらに子どもへの愛情や子どもを育てていける環境が重要になります。
金銭的な面はもちろんですが、祖父母の援助や子どもと過ごす時間を確保できるかなど子供にとっていい環境であることをアピールできるよう準備しておきましょう。
財産分与について調べておく
夫婦が婚姻中に築いた財産は離婚する際の財産分与の対象になるため、離婚前に家の財産を把握して念のため証拠を集めておきましょう。
財産分与の対象は「夫婦が共同生活を送る中で形成した財産」です。
- 共同名義で購入した不動産
- 共同生活に必要な家具や家財
- 預貯金
- 車
- 婚姻中に夫婦が協力して取得した財産
財産分与の額は公平な分配が基本なので、夫婦で2分の1ずつ分けることになります。
場合によっては相手が預貯金などを偽る可能性もあるため、確認できるものは事前に確認・コピーをとるなどの対策も必要です。
未練や後悔がないかもう一度検討する
相手のDVや不貞行為などで離婚するのとは違って相手に非がない・理由がない離婚の場合には、結婚生活に対する未練や後悔がないかもう一度検討することをおすすめします。
離婚前はイライラして一緒にいるのが耐えられないと思っていても、いざ離婚して離れてみると頼る相手もいなくて不安、やはり一緒にいればよかったと後悔することも。
離婚するための準備とは
離婚すると決めたら、まずは離婚に向けて準備をすることが大切です。
- 経済的に自立するために仕事を探す
- 相手に請求可能な費用を調べる
- 公的な支援制度について調べる
- 住むところを確保する
- 転居後の子どもの学校などを検討する
収入を安定させることはもちろんですが、離婚するにあたり相手に請求できる費用や公的な支援についても調べておきましょう。
離婚するために準備しておくべき内容について詳しくみていきましょう。
経済的に自立するために仕事を探す
離婚して自立した生活を送るために、まずは仕事をして安定した収入を確保することが必要です。
離婚後は実家などに頼るという方もいると思いますが、継続的に援助してもらうのは難しい場合もあるため自分で稼ぐ手段を見つけなければなりません。
子どもがいて再就職が難しいのではと考えている場合には、ハローワークなどに相談して教育給付制度を利用するという手段もあります。
就職に有利になる資格取得などについても検討してみるといいでしょう。
相手に請求可能な費用を調べる
離婚するにあたり相手に請求が可能な費用についても知っておくことで、離婚後に必要になる費用などをまかなえます。
- 財産分与
- 養育費
- 慰謝料
- 年金
離婚前に別居を検討している場合には、別居期間中の生活費を「婚姻費用」として請求することも可能です。
子どもがいる場合には養育費、相手に非がある場合には慰謝料などの請求もできるので、もらえるものはもらって損をしないよう事前に準備を。
年金は相手への請求ではありませんが将来の大切な生活費になるので、忘れずに分割手続きをしましょう。
公的な支援制度について調べる
離婚後に一人で子どもを育てていく場合など、厳しい状況をサポートしてくれる公的な支援制度の利用についても考えておきましょう。
- 経済的な支援制度(児童扶養手当、就学援助など)
- 就職に関する支援(自立支援教育訓練給付金など)
- 住居等に関する支援(母子生活支援施設など)
- 生活に対する補助・優遇制度(医療費補助制度、税金の軽減など)
公的支援の種類はさまざまなので、自分に必要な支援はなにか、どのように支援を受けられるかなど、お住まいの市町村へ申請・相談をおすすめします。
住むところを確保する
離婚後に現在住んでいる家を出る場合には、住むところを確保する必要があります。
実家に身を寄せられるのであれば家賃などの心配はありませんが、賃貸で家を借りるには毎月の家賃や敷金などですぐに大きなお金も必要です。
経済的に通常の家賃を支払っていくことが困難であれば、母子生活支援施設や母子(父子)家庭を対象として公営住宅へ入居優遇している自治体もあります。
転居後の子どもの学校などを検討する
離婚して住んでいる家から引っ越しをすると現在の学校や保育園に通うことが難しくなる場合もあるため、転居後の子どもの学校などを事前に検討することも必要です。
保育園によって受け入れ状況や空き状況も違い、自治体によっては待機が発生している可能性もあるため事前に確認しなければなりません。
小中学校などは通学できる距離に引っ越すことで転校しなくてもよいケースもあり、学区の問題などは自治体に相談すれば解決できる場合もあります。
どうしても転校が必要な場合には、事前に転校先の学校と連携をとるなど子どもの負担軽減についても十分検討しましょう。
まとめ
決定的な理由がなくても、協議離婚や調停離婚などの話し合いでお互いが合意すれば離婚は可能です。
ただし話し合いで決着がつかず、裁判になった場合には法的に定められた離婚理由が必要になります。
また、離婚したいときの理由の作り方についてまとめました。
- まずは夫婦生活における不一致を考える
- 不一致から離婚したい根拠を明確にする
相手に合意してもらうための離婚理由を作るなら、感情的にならずに順序立てて考えましょう。
理由がない離婚で慰謝料が発生することはありませんが、逆に相手から慰謝料をもらうこともできないため、離婚後の経済的な自立についてしっかりと考えてから離婚に踏み出すことが必要です。
決定的な理由がなく離婚すると精神的・経済的に後悔する可能性もあるので、離婚を切り出す前にもう一度離婚するべきか検討することをおすすめします。
最終的に離婚を決めたら新しい気持ちで新生活をスタートできるよう、必要に応じて自治体や弁護士に相談するなどしてしっかりと準備しましょう。
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